老眼治療最先端 視力回復のための眼内レンズ手術
老眼を治し、視力を確実に回復させる方法は、今日においても確立されたとは言えません。
しかし、老化現象である老眼そのものを治すことができなくとも、視力を安全な方法で相当程度まで回復させる手術は、日々進歩しつつあります。
現在において、視力の回復を目的とした老眼手術は、主に二つあります。
ひとつは、左右の眼で異なる屈折率となるように高周波(ラジオ波)をあてて、角膜のカーブを矯正する、「老眼CK(Conductive Keratoplasty)」という方法です。
左右の屈折率を違えるために、通常は片目だけに施術されますが、例外的に両眼手術が行われる場合もあります。
老眼とは、一般的に近くのものが見えづらくなる症状ですが、この手術は本質的に遠視を矯正するものであり、そのため近視を矯正することはできません。
また、角膜のカーブを変えてしまいますので、手術後にやっぱり元の状態に戻す、ということもできません。
この「老眼CK」は治療時間も5~10分程度と短く、メスを入れないために合併症がないことからも安全性の高い手術であるといえます。
ただし、左右の眼で見え方が異なることから、人によっては疲労感を感じたり、あるいは遠近感がとりづらくなったりする場合もあるようです。
眼のカーブを変えるにせよ、老眼の進行そのものを止める手術ではありませんので、手術の効果が衰えた場合など、後日に追加手術が必要になる場合もあります。
また手術後も、補助的にコンタクトレンズや老眼鏡が必要になる場合があります。
この手術は保険適用外ですので、費用は片眼で8~10万、両眼の場合で16~20万円程度は、みておいたほうがよいようです。
老眼回復のためのもうひとつの治療は、白内障の治療のみならず、老眼においても視力回復効果が高いとされる「多焦点眼内レンズ」手術です。
眼内にレンズを入れるという手術自体、1980年代にヨーロッパで始まったものですが、そのなかでも「多焦点眼内レンズ」の歴史は浅く日本でもまだ始まったばかりという段階です。
これまでの眼内レンズ手術は「単焦点眼内レンズ」で、ピントが近くか遠くのどちらかにしかあわず、手術後には老眼鏡やコンタクトレンズがどうしても手放せない、という欠点がありました(ちなみに、単焦点眼内レンズの場合は保険適用があり、自己負担3割として片眼5~8万円程度の費用となります)。
それを解消するのがこの「多焦点眼内レンズ」で、眼内に入れる一枚のレンズが近距離と遠距離の両方にピントが合うように、いわば「遠近両用の眼内レンズ」として設計されています。
この「多焦点眼内レンズ」手術は、基本的には、白内障などで濁った水晶体を摘出し、人工の水晶体(眼内レンズ)に入れ替えるものです(ちなみに、強い近視の矯正を目的として、水晶体を残したまま角膜と水晶体の間に眼内レンズを入れる手術もあり、これは「フェイキックIOL(有水晶体体内レンズ)」と呼ばれています)。
「多焦点眼内レンズ」手術においては、「単焦点眼内レンズ」に比べレンズの構造が複雑であり、またメーカによっても異なっていることもあり、患者の症例にあわせたオーダーメードのレンズを使用することがポイント、とされます。
具体的には、角膜に3ミリほどのすき間を空け濁った部分を取り除いた後、シリコンないしアクリル製素材の眼内レンズを挿入します。
手術の所要時間は10分程度と短時間で済み、入院の必要のない日帰り手術のところも多くあるようです。
症例数については、国内では4万例を超えるレーシックと比べ圧倒的に少ないのが現状です。
費用面では老眼CKと同じく、厚生労働省の認可は受けているもののいまだ保険適用外の手術であり、片眼でも40~50万円程度かかる、かなり高額な手術となっています。
こちらは老眼CKと異なり、通常は両目とも手術を行います。そうなると、手術費用が80~100万円近くになることもあります。
歴史の浅さと高額な手術費用がネックとなって、まだまだ知られていない「多焦点眼内レンズ」手術ですが、視力が回復し、老眼鏡をかけなくてすむ時間も長くなるため、生活の快適さが老眼・白内障手術前にくらべて格段に増すことについての満足感をもたれる方も、多くいるようです。
欧米では白内障手術を受ける患者の1割以上が、高額であるにもかかわらずこの「多焦点眼内レンズ」手術を受けているといわれますが、日本においても、老眼・白内障治療の本命として今後の広がりを期待する声がでてきています。
むろんすべてが良いことづくめということはなく、理解しておくべきデメリットも存在します。
まず知っておきたいのは、視力が回復するにしても、人口のレンズを水晶体の代わりとして眼内に入れる手術ならではの限界がある、ということです。
すなわち、若い頃のように、近くでも遠くでも自在にピントを100%ぴしっとあわせて見る、というほどの回復とはなりません。
この手術は遠視や強度の近視の方に向くとされていますが個人差もあり、手術後の見え方に慣れるまで数ヶ月近くかかる人もいるようです。
老眼CKと異なり近視の方でも受けることができますが、近くのものについてかえって見えにくくなる場合もあることから、手術前の適応検査で受けないほうがよいと判断される場合もあります。
また、見え方が改善するにせよ、シャープな感じに乏しかったり、夜間の車のライトをまぶしく感じたりする方もいるため、そのあたりが気になる神経質な方には向いてない手術である、との指摘もなされています。
これまでの事例をみる限り、手術を受けた人が全員満足する…ということではなく、得られる視力と見え方がそれぞれ異なっているため、手術後の個々人の満足感にも差があるようです。
つまり、手もとと遠方がよく見えるようになりさえすればよい…ということをお求めの患者さんばかりではない、ということになりますね。
いずれにせよ、「多焦点眼内レンズ」手術においては、手術実績を有する医院を選ぶようにし、自分の場合は手術後にどの程度の視力が得られるのか、あらかじめ担当医とよく相談されたうえで受けるのがよいでしょう。
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